一筆書きは何通り?

ここでは一筆(ひとふで)書きの場合の数に特化して研究します。
一筆書きができる図形の条件を考えることは(結び目理論と呼ばれるほど)大変難しいのですが,
ここで扱う題材は一筆書きできる条件を満たすことを前提とします。
(田の字のように,一筆書きができなければ,0 通りですから…)

また,文章が無駄に長くならないよう、ここでは「始点または終点」を,単に始点と呼ぶことにします。

例題 1 次の図で、A を出発点として一筆でえがく方法は何通りあるか。


最初に選べる方向は 8 通りあります(画像の説明では、方向を「道」と呼んでいます)。
そのうちの 1 つを選んで A に戻ると,選べる方向は 6 通りに減ります。
さらに選べる方向の 1 つを選んで A に戻ると,選べる方向は 4 本に減り,
最後に選べる方向は 2 通りとなります。
よって,8 × 6 × 4 × 2 = 384 (通り)

例題 2 次の図で、A を出発点として一筆でえがく方法は何通りあるか。

交差点へ向かう方法は 2 通り、交差点から A に戻れるのは最後なので、交差点から向かえる方向は 6 通り。
以下,例題 1 と同様に考えて,2 × 6 × 4 × 2 = 96 (通り)

例題 3 次の図のような道を一筆書きで結ぶ方法は何通りあるか。

一筆書きは例外を除けば,交差点が始点となります。
(図1の直径 AB がなくなってしまうと円ですから,始点が無数に存在します。)
図1に話を戻すと,始点は A, B のどちらでもよさそうです。
まず,A を始点として考えてみます。

A を出発するとき,その道の選び方は 3 通り。
B から A に引き返すときは (道を 1 本使ってしまったから) 2 通り
A に戻って再び B に戻る方法は 1 通り
以上より,A を始点とした場合は 3×2×1 = 6 (通り)

ここまでは,3! 通りと考えてよいでしょう。
しかし,B を始点とした場合も同じだけあるので,
求める場合の数は 2×6 = 12 (通り)

一般に,異なる 2 点 A, B を結ぶ道がちょうど n 本あり,A, B のいずれかを始点とする一筆書きの方法は, n!×2 通りあります。
念のため…
n = 1 のときは線分 AB 間の一筆書きなので 2 通り。
n = 2 (一般に偶数)のときも,「A または B を始点とする」と限れば,成り立ちます。

n が奇数のときは始点と終点は異なり,偶数のときは(始点が指定されていれば)始点に戻ってきます。

(出題者目線の蛇足)AB 間を結ぶ道が奇数本のときは始点を定める必要はありませんが,
偶数本ある(さらに拡張して,始点と終点が一致する)場合は始点(の候補)を指定しないと,
解答は「無数に存在する」となってしまいます。

例題 4  次の図のような道を一筆書きで結ぶ方法は何通りあるか。

AB を結ぶ道が 1 本しかないので,A の中で一筆書きが完結するものと,B の中で完結するものに分けます。

A の中で完結する一筆書きについて
 最初は 6 通り選べますが,どれを選んでもそのまま A に戻ってしまいます。
 つまり,2 回目の道の選択肢は 4 通りに減り,3 回目は 2 通りとなります。
 以上より,A の中で完結する一筆書きは,6×4×2 = 48 (通り)
B の中で完結する一筆書きも同様に,4×2 = 8 (通り)
さらに,始点の選び方が(A,B の)2 通りあるので,求める場合の数は,
48×8×2 = 768 (通り)
例題 3  次の図 3 のような道を一筆書きで結ぶ方法は何通りあるか。

まずは始点の候補を割り出しましょう。
もし C を始点にすると,B に行くことを考えなくても C に戻ってしまいます。
A が始点のとき,どの方法も B を 1 回,C を 2 回経由して B に至ります。
この並べ方は 3 通りです。(→同じ文字を含む順列)
また,道の選び方は AC 間で 4! = 24 (通り), AB 間の道の選び方は 3! = 6 (通り)
B を出発するときも同じだけあるので,求める場合の数は,
3×24×6×2 = 864 (通り)
例題 5  次の図 4 のような道を一筆書きで結ぶ方法は何通りあるか。

AB 間の道が 2 本,BC 間が 3 本,CD 間が 4 本あるので,始点は B または C です。
A を無視して考えると,例題 3 と同じ問題になることに着目します。

<解答>
A を無視して考えると,B から C へ向かう経過点の並べ方は 3 通りある。
例えば BCBCDCDC と結んだとき,「B」を「BAB」に取り換えると,図 4 の一筆書きの 1 つができる。
その取り換える方法は 2 通り。
道の選び方について,AB 間は 2! 通り,BC 間は 3! 通り,CD 間は 4! 通りある。
さらに,始点の選び方が 2 通りあるから,求める場合の数は,
2×3×2!×3!×4! = 3456 (通り)
出てきた数値にニヤリとしてしまいました。(笑)

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